サカナクション スタジオコースト

先週の土曜日、サカナクションのライブに行ってきた。
ここ最近、飛ぶ鳥を落とす勢いで売れてきているバンドである。
相対性理論に続いて、若者に人気のバンドを取り上げることで、
最近の音楽に詳しい管理人として、確固たるポジションを築き、
twitterにおける、女子フォロワーの更なる増加を図りたいところである。
とはいえ、バンドへの思い入れがあまりないので、
何について書けばいいのか、ライブ前はわからなかった。
Base Ball Bearや相対性理論のように、
メンバーに好きな女子がいるという理由がないと、
曲が好き以上の感情は持てないのである。
サカナクションにも女性メンバーはいるのだが、
同じ女性ベーシストでも、草刈さんは関根さんとまるで違う。
実写版「ベヨネッタ」の作成が決まった際には、
彼女に出演オファーが来るのではないだろうか。
キーボードの岡崎さんに至っては、更にわからない。
どうしてそのメガネをかけようと思ったのだろうか。
ライブ会場は、新木場のスタジオコーストであった。
同伴者は前回同様、唯一の知人である小川ひなた嬢である。
彼女は年末のカウントダウンライブで、彼らのステージを経験しており、
「CDよりもライブの方が全然いい」と、CDを貸した僕に教えてくれた。
サカナクションのライブにおいて、観客が覚えておくべきことは、
「ネイティブダンサー」のクラップの独特なタイミングである。
普通に三拍した後に、フェイントのような間が空いてからの一拍。
一人だけ間違えると、恥をかくことは必至の恐ろしい罠である。
「練習してきた」という彼女は、完璧なクラップをやってみせた。路上で。
一方、事前にイメージトレーニングしてきただけの僕は、
いくらやっても電線音頭になってしまうのであった。
やがて新木場に到着。降り立つのは初めてだったが、
大きいすき家があるという以外は、特に印象に残らなかった。
「先週、ここで大規模なゲイのクラブイベントがあった」という、
あまり知りたくなかった情報を聞いているうちに会場に到着する。
開場まで少し時間があったので、物販に並ぶことにした。
オサレなTシャツは既に売り切れていたので、
二人共にマフラータオルなる商品を購入する。
1000円という安価にそぐわぬペラペラなタオルで、
バンドのシンボルマークである魚の骨が描かれており、
額縁に入れて飾れば、魚拓にもなるという優れものである。
かなりグダグダな入場整理の後、場内に入る。
ドリンクを後回しにしたので、かなり前の方に陣取ることができた。
百戦錬磨のひなたさんはいいが、僕はこんなに前に来たのは初めてである。
「大丈夫?もうちょっと後ろに下がる?」と心配されたが、
サカナクションのファンは、草食系が多いイメージだし、
事実、カップルで来ましたみたいな緩い雰囲気の人が多かったので、
大丈夫であろうと判断し、そのままの位置に待機して開演を待った。
だが、場内が暗転し、ステージにメンバーのシルエットが浮かび上がった瞬間、
なぜか教室が上海万博に。一気に観客が前方に怒涛の如く押し寄せてきた。
これまで何度かライブを経験し、少しは慣れたつもりでいた僕だが、
思えば、アリプロはライブじゃなくて完全にコンサートだったし、
同じようにファンが若いであろう、Base Ball Bearは武道館の二階席、
相対性理論に至っては、ほとんどの観客が棒立ちであった。
それらはほんの序の口であったと、今回のライブで思い知らされた。
ソマリアとソマリランドぐらいに危険度が違うのである。
「intro = 汽空域」が終わり、ステージの幕が開くと、
「明日から」「表参道26時」と冒頭から最高潮の盛り上がりを見せる。
周囲が皆ぴょんぴょんと跳ねているので、僕もぎこちなく跳ねた。
こんなに跳ねたのは、ラジオ体操第一以来であろう。
また、今までライブ映像などで、腕を上に伸ばしている人を見る度に、
「お前はスタン・ハンセンにでもなりたいのか」と思っていたが、
実際に体験して、どうしてそんな行動に出るのかを理解した。
圧倒的な人口密度故に、腕を伸ばすことができる空間が上にしかないのである。
運動部のペースに、早くも置いていかれ気味の帰宅部の僕。
隣にいたはずのひなたさんは、二曲目の時点で見失ってしまった。
ちょっと一息入れるために「関白宣言」とかやってくれと思ったが、
その後も「セントレイ」「アドベンチャー」「Klee」という、
巨人打線の如く切れ目の無いセットリストが続いた。
「コースト行くぞー!」と観客を煽るボーカルの山口氏。
ここで「無理で~す」って返したら、どうなるのだろうか。
そして、思ったよりも早く僕の身体が限界を迎えた。
今までのライブでも、体調不良を覚えることはあったが、
それはずっと立ちっぱなしで足が痛いなどの筋肉疲労であった。
だが、今回は意識がブラックアウト。完全な脱水症状である。
徐々に視野が狭くなっていき、今にも倒れてしまいそうな状態になった。
このまま、サカナクションのライブ初の死者となってしまうのか。
山口氏は真面目そうだから、僕のために追悼歌を作ってくれるかもしれない。
「HERO」と名付けられたその曲はライブの定番となり、僕は永遠の存在となる。
それはそれでいいかも……と思い始めたが、
僕の死が原因で、バンドが社会的に非難されてしまっても問題なので、
朦朧とした意識の中、フラフラした足取りで後ろの方に下がった。
命からがら、何とか柵のあるところまでたどり着くと、
そこで床に座り込んだ。意識は変わらず朦朧としているが、
とりあえず生命の危機は去った。そのままの姿勢で回復を待つ。
近づく僕の存在に気付いていなかった人は、ふと視線を下に移した時に、
床に座り込んでいる謎の黒い塊がある訳だから、さぞかし驚いたことだろう。
会場に住み着く地縛霊だと思われたかもしれない。私にも聞かせてぇ。
床に座り込んだまま、流れてくる音のみを聞いていると、
ここがライブ会場なのか、自分の家なのかがわからない、
波に揺られて海面を漂っているような不思議な感覚に襲われた。
これこそがまさに、山口氏が提唱していた汽空域そのものである。
自分だけが世界から切り離されているようなこの感覚は久しぶりで、
ここ最近、自分が何者で、何をしたかったのかを見失っていたが、
久しぶりに本当の自分を取り戻せた気がする。
そんな訳で途中から、サカナクションと関係ない日記になってしまった。
ライブレポートとして不完全な形になってしまったので、
いつかまた行きたいとは思うが、今後は普通に後ろの方で見ます。