インシテミル


米澤穂信さんの「インシテミル」を読み始めた。
「このミステリーがすごい」にも毎年ランクインしている、
僕が以前サイン会に参加したことでもお馴染みの作家さんの作品である。
カバーイラストとタイトルからは、内容がいまいち想像できないと思うが、
ミステリである。しかも洋館ものである。外部と遮断された陸の孤島である。
そんな現代では若干無理がある舞台にどうやって連れ出したかと言うと、
主人公は「時給11万円2千円」という怪しいアルバイトに応募したのであった。
内容はとある実験の被験者となり、7日の間24時間常に行動を監視されるというものであった。
実験の詳しい内容は、実際に参加するまでは伝えられないという怪しさである。
こうして主人公を含めた12人の参加者が実験所である「暗鬼館」に集められた。
館に到着した参加者達は、各自が引いたカードキーの番号通りに12の個室に通された。
そこには物騒なメッセージが書かれたメモと一緒に人を殺すための武器を置いてあった。
主人公の武器は鉄製の火かき棒。冒頭で知り合った女性の武器は毒薬であった。
何やら嫌な予感を抱く参加者達、そこに館の主からの放送が入る。
この実験では、主人の意図を体現した行動を取ることによって報酬にボーナスが入るとのこと、
それは殺人であった。人を一人殺す度に報酬総額が2倍になるということである。
この実験は、参加者同士で金を目的に殺しあうことを期待しているのである。
それなら強力な武器を持った奴が無差別に殺人を行えば終了ではないかと思われそうだが、
殺害を行おうとする際、第三者に制止されたら従わなければならないというルールがあり、
それでも犯人が暴れそうものなら、ガードによって制圧され、全報酬を没収のうえ、以後は監獄に収監される。
また殺人が起こった際、誰かが殺人を犯したものを指摘して、それに過半数の同意を得られれば、
指摘した人の報酬総額が3倍になり、犯人は監獄に入れられるというルールもある。
つまり殺人を行うなら、誰にもバレないようにやらなければならないのである。
あくまで実験というのをいいことに、好き勝手盛り込んだ設定にワクワクである。
洋館ものにバトルロワイヤル要素も含んでいるので、こいつが怪しいと思った人物が犯人で、
かつ他の人物も犯人になるという可能性があり、全くもって展開が予想ができない。
参加者の一人が黒幕オチもありえるが、よほどの変態でもなければ、
わざわざ殺される危険性がある実験に本人が参加する必要性がない。
実験のための設備費用などを考えて、それだと該当人物がほぼ一人に絞られるので、
今のところは特別な理由がない限りそれはないであろうと考える。
そんな訳で実験が始まったのだが、この実験で守らなければならないルールは、
「午後10時から午前6時までは、各自割り当てられた個室(鍵のかからない)に入っている」
というだけで、別に殺し合いをしなくても参加者に何らペナルティはないのであった。
極端な話、一週間のほほんとしていても、1800万円の報酬が与えられるのである。
「何もしなくても金は入るんだから、変なこと考えずに大人しくしようぜ!」
参加者の一人が皆に訴えかける。全くもってその通りである。
僕がその場にいても同じことを訴えていたであろう。人の命はお金で買えないのである。
それに対して「オレは好きにやらせてもらうぜ」など阿呆なことを言う輩もおらず、皆が同意した。
その後は皆で食事をしたり、ゲームに興じるなど、殺し合いは起きずに一日が終了した。
ここまで読んで僕は確信した。これは殺人など起きない。館の主の目論見は失敗に終わり、
このまま何事もなく一週間が過ぎ去るという、ミステリ史上に残るオチに違いない。
まだ300ページ以上残っているが、それは報酬で何を購入するのかに使われるのであろう。
しかし翌朝になって参加者の一人が食堂に姿を現さなかった。
これはまずい展開である。死亡フラグというか既に死亡しているフラグである。