ハラヒロミの特に意味のない話

僕が天然素材の頃の話なんですが、昼食を取りにぎょうざの満州に行きました。
ぎょうざの満州というのは、今年になって駅前にできた餃子のチェーン店で、
主に駅前でパチンコをする人達の間でブームとなっている人気スポットです。
駅前にはちょうど中華を食べられる店がなかったので、僕もよく行っています。
今回はピーマンセットという、人類の英知の結晶のようなセットを注文しました。
注文を終えた僕はピーマンの歌を歌いながら料理を待っていたのですが、
ふと隣の席の女性を見ると、餃子にチャーハンに中華丼に唐揚げ丼という、
ドン小西もびっくりの丼祭りでした。これが噂に聞く満漢全席というものでしょうか。
女性の外見はいかにも大食漢という感じではなく、痩せたギャル的風貌でした。
最近、テレビでよく見る大食いのギャル曽根さんの親類の方だと思われます。
それもしても、カウンターのテーブル狭しと並べられた料理の数々と言ったら。
金額を単純計算しても1500円は超えています。何たるブルジョワでしょうか。
僕の夢はチャーハンセットに単品でレバニラを頼むことなので激しく嫉妬しました。
いつか実現したいと思うものの、1000円を超えてしまうので怖くて注文できません。
30歳になるまでには何とか実現したいところですが、果たしてどうでしょうか。
しかし気になるのは、全ての料理が半分ぐらい食べたまま放置されていることです。
もしかしてこのまま残すつもりなのでしょうか。もったいないお化けも大激怒です。
これは最後まで見届けねばなるまい。僕は密かにそう心に誓いました。
もし食べないのであれば、僕にくれるように交渉しよう。そうとも思いました。
そうこうしているうちに僕の元に料理が運ばれてきました。
ライスに餃子に肉ピーマン炒めという球界屈指のクリーンナップです。
まずは餃子をたっぷりのラー油醤油につけて半分ほどパクリといきます。
すぐさまライスを口に含みます。その味たるや、筆舌に尽くしがたい美味さです。
そんな余韻も冷めないまま、続いて肉ピーマン炒めに箸を伸ばします。
歯ごたえのいいピーマンと柔らかな細切り肉のツンデレでお馴染みのこの料理、
ピーマンの青みとジューシーな肉汁によるハーモニーが口中に広がります。
ベートーヴェンの「運命」がピーマンセットを食べた時の感動を表現したということは、
音楽好きの間では有名な話です。ピーマン一つで人は感動することができるのです。
農家の皆さんありがとう。こうして僕は将来農家になることを決意したのでした。
一方、隣の席の女性は箸を置いたまま、ボーっと半分残った料理を眺めています。
「もう食ったさ、腹いっぱいだ」状態でしょう。いくらなんでも頼みすぎです。
しかし次の瞬間、彼女はラーメンを追加で頼みました。まだ食べる気かこの女。
多分、ご飯ものばかりに飽きたので、お汁代わりにしようと言うのでしょう。
僕は既にライスが底を尽きかけていたので、半ライスを追加で頼みました。
通常の半分の量でお馴染みのあいつです。これが人生で初めての半ライスでした。
そして彼女はラーメンを半分ほど食したところで再び箸を置きました。
おそらくこれで終わりでしょう。締めはラーメンというのが世間一般の常識です。
あとは料理を残したまま会計に向かう彼女を捕まえて説教をするだけです。
「げぷっ、世界では餓えに苦しむ人々がたくさんいるのですよ。げぷっ」
僕の言葉に反省した彼女は、お詫びとしてお土産餃子を買ってくれるに違いありません。
しかし次の瞬間、彼女が肉野菜炒めを頼んだので僕は諦めて店を出ました。
現実はテレビと違って、オチのつく出来事になかなか出会えないものです。