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Fate/Grand Partyに行く

先日、原宿で開催されたFate/Grand Partyに行ってきた。人気スマホアプリ「Fate/Grand Order」の期間限定リアルイベントとして5月の中旬から開催されているイベントで、作品の展示物や映像、ドリンクやフードやオリジナルグッズの販売などを楽しむことができる。既に全日分のチケットが売り切れている人気イベントであるが、僕は皆が仕事中の15時のチケット販売開始直後に光の速さで予約したため、見事土曜日の昼からの回の1番と2番の席を確保することに成功したのであった。

だがここで問題が発生した。チケットは二枚取ったものの肝心の一緒に行く相手がいないのである。友達がいないのにどうしてイベントがある度にチケットを二枚取ってしまうのか、自分のチャレンジ精神の高さに後悔する。

考えた末、東京在住、面識がある、Fate好き、FGOプレーヤー、腐女子(且つ美女)などの条件から、以前パスピエのライブに誘ったAさんを誘ってみることにした。彼女以外に条件に合う候補が思い浮かばなかったとも言える。善は急げとチケットを予約してすぐに彼女のLINEに連絡を入れた。

「友達が一回分取ってくれたので…」
程なくしてそんな返事が返ってきた。しまった。彼女は腐女子特有のネットワークによって既に他の人からの誘いを受けていたのであった。
「日時が被ってなければご一緒します」
文章はそう続いていた。よかった。彼女は腐女子特有の同じイベントに複数回行くのを苦にしない精神の持ち主であった。

そんな訳で当日である。我々は会場に近い原宿駅前で待ち合わせることにした。
Aさんと会うのはパスピエのライブに行った以来二度目となる。顔が分かっているため初回の時のような緊張感はないものの、普通に可愛らしいお嬢さんであることが判明しているため、初回とは違った緊張感があった。むしろ一年近く会っていなかったため、脳内でさらに美化されつつあった。

前回会った時はAさんの方から何の躊躇もなく僕に話しかけてきたが、今回はAさんの方が先に到着していたため、僕の方から「こんな顔だった……気がする!」と恐る恐るAさんと思われる女性に声をかけた。これで違っていたら大惨事だったが本人であった。

Aさんは前に会った時の夏らしい爽やかな服装から一転、全身黒ずくめのオルタバージョンの服装であった。彼女のTwitterを見るに最近残業が続いているようでストレスからオルタ化してしまったのであろう。僕は待ち合わせ時間の15分前には着いていたのだが、あまり早く連絡しても彼女が焦るだろうと思い10分前になってから連絡を入れたのだが、彼女は30分前には既に到着していたらしい。早すぎですよ。

ともあれ無事に合流出来たので原宿の街を歩きながら会場へと向かう。
久々に再会した独身男性と妙齢の女性なので、道中の会話も自然とそんな感じになった。

「最近は(Fate/Grand Order)どうですか?」
「バーサーカーばかり出ます。先日もナイチンゲールが出ました」
「ほう、僕もバーサーカーは金時とヴラドの二体おります」
「ブリュンヒルデとかが欲しいです」
「あ、槍なら僕、スカサハ持ってます」
「羨ましい!」
「あとは弓と杖の☆5を引けば一通り揃います」
「あ、弓なら私、この前ギルガメッシュを引きました」
「羨ましい!」

そんな会話をしているうちに会場のAREA-Qがあるキュープラザ原宿に到着した。1階のエレベーター前には開場を待つ人々で既に行列が出来ており、オタク系イベント特有の謎のテンションで各々が盛り上がっていた。並んでいる客層は男性よりも女性の方が多く、元々の原作が18禁のPCゲームであることを考えると隔世の感がある。我々の前には男性の二人組が並んでおり、互いのスマホのゲーム画面を覗き込んでキャッキャしていた。そんな楽しそうな彼らのやり取りを見て、今回女性を召喚することに成功して本当に良かったと思った。

しばらくしてエレベーターに乗って会場のある7階へ移動した。入場方法だが、紙のチケットではなく、メールに添付されていたQRコードを提示するという形式であった。自分のところに送られてきたQRコードが本物なのか不安だったのだが、無事に二人分のチケットが読み込まれた。確認が済むとポストカードを4種類の中から好きなのを選んでくれということだったのでマリーを選択した。その他にもシールや使う機会がなさそうなタイトルロゴの入ったエコバッグなどが貰えた。

会場に入ると店員さんに席に案内された。何せ選ばれし1番と2番の席であるから、他の客を高座から見下ろす玉座のような席を予想していたが、案内されたのは一番奥の隅の席であった。手前の席に座ると見えるのはAさんと隣の席の人だけである。パーティー感皆無。
我々の席の後ろには、今後販売予定のフィギュアのサンプルやマシュの盾、エクスカリバーなどの展示物が置かれており、壁に掛かっている大型モニターには、キャラクターの宝具(必殺技)の演出が順番で流されていた。ゲーム画面は普段は自分一人でしか見ないので、こうやって大画面で見るのはなかなか新鮮である。
「この子可愛い」「こいつ強い」「子安」など二人で感想を言い合う。
その他にも、セイバー役の川澄綾子さん、マシュ役の種田梨沙さん、公式広報の島崎信長さんの三人による座談会などが流されており、FGOが好きな人ならぼんやりと時間を潰せる空間であった。

とはいえ、このまま延々と映像を見続けているのもなんなので、フードとドリンクを購入するために席を立った。
アニメやゲームのコラボカフェ的なものは、以前会社の女子と行った刀剣乱舞カフェに続いて二度目である。その時は常設されているアニメイトカフェでの開催だったので、カレーやオムライスなどのちゃんとした食事が出てきたが、今回の会場はフリーのイベントスペースのような場所のため、用意されているメニューは全て出来合いの、炎上汚染都市冬木名物のり弁当、聖女特別監修バゲットサンド、ローマ帝国謹製冷製アマトリチャーナの三種類のみであった。どれもがコンビニで売っている弁当にキャラクターのイラストが描かれた掛け紙を貼っただけにしか見えない。むしろ掛け紙が本体と言ってもいいだろう。

どれを選んでもいいのだが、女性との初めての食事がのり弁というのはさすがに憚られるし、ロムルスの掛け紙に追加料金を払うのも癪である。消去法でジャンヌ・ダルクのイラストが描かれた聖女特別監修バゲットサンドを頼むことにした。ジャンヌ・ダルクの声優は、我らが坂本真綾さんなので彼女が監修したに違いない。独身男性の健康を考えてか、サンドウィッチに加えてカップに入ったシーザーサラダも付いていた。二人でシェアする予定だったので食べにくいことこの上ない。

フードに続いてドリンクを注文することにした。ドリンクにはキャラクターの名前がそれぞれ付けられており、注文時にそれを口に出して言うのが微妙に恥ずかしかった。「ジャンヌ・ダルクをください」って日常生活でなかなか言う機会はないですよ。

10種あるメニューの中から、Aさんはアルテラ(カルピスオレンジ)、僕はジャンヌ・ダルク(ジンジャーカルピス)を注文した。ドリンクを一杯注文する毎に箱の中からキャラクターのイラストが描かれたコースターを1枚引くことができるので二人で引いてみたところ、Aさんはカルナ、僕はクー・フーリン(キャスター)であった。
Aさんのカルナは会場限定バージョンの当たりキャラであるが、僕が引いたクー・フーリンは10種類の中で最も微妙なキャラであった。ランサーの方のクー・フーリンは人気キャラなのだが、キャスターの方は人気キャラとも不人気キャラとも言えぬ、かと言ってネタキャラでもないという、運営が引いた客を困惑させてやろうと思って入れたに違いないチョイスであった。

自身の引きにショックを受けながら座席に戻る。食事を頼むとランチョンマットが付いてくるとのことだったのだが、配られたのはランチョンマットとは名ばかりのイラストが描かれたペラペラの紙であった。Aさんは来週も来るからと僕に渡してくれたのだが、このまま鞄に入れても折れ曲がってしまうこと必至である。どうしたものかと持て余していると、Aさんが「ちょっと貸してください」と言って、アルテラのコップに巻かれていた輪ゴムを取り外すと、ランチョンマットをクルクルと丸めてそれを輪ゴムで止めて僕に手渡した。

「こうすれば折り曲がりません」
「なるほど!」
「多くのイベントを経験した腐女子の知恵です」
「腐女子の知恵恐るべし!」
幾多の戦場を経験した腐女子の生活に役立つ知恵、ゆくゆくはまとめて書籍化したいところである。

想像通りの味のフードとドリンクを食べ終えると、Aさんが今度こそアルテラのコースターを当てに行くというので、自分もお付き合いすることにした。カウンターの前には長い行列ができていたので、待っている間に周囲の展示物を見学したのだが、よく見るとトイレの男女のマークが主人公男女のシルエットになっていたり、壁にこっそりとおき太とノッブのイラストが貼られていたりと、フードやドリンクのやる気の無さに比べて、ファンの心をくすぐるような細かい仕掛けが施されていた。おそらく一部に書店員タイプの担当者がいるのであろう。

二杯目のドリンクにAさんはアルジュナ(カフェオレ)、僕はジャンヌ・ダルクオルタ(チェリーコーラ)を注文した。もう一回コースターを引くことになるのだが、これでもし二回連続でクー・フーリンを引いてしまっては、クー・フーリンがトラウマになってしまう危険性があった。そんな訳でAさんに僕の分も代わりに引いてもらうことにした。

これでAさんがクー・フーリンを二枚引いたらそれはそれで面白かったのだが、彼女が引き当てたのは、ジャンヌ・ダルクとマリーであった。二人とも可愛いキャラなのでどちらのコースターを受け取ろうか迷っていると、
「来週行く友達がキャスニキが好きなので交換しましょう」
Aさんはそう言って自身が引いた二枚のコースターを僕に渡し、代わりにクーフーリンのコースターを受け取ってくれた。そんな趣味を持つ人物が実在する訳ないのに……彼女の優しさに心が打たれた。

席に戻ってドリンクを飲む。僕が頼んだジャンヌ・ダルクオルタは、爽やかなチェリーコーラにべったりしたクリームが載せられており、絶妙な後味の悪さが印象的であった。Aさんのアルジュナには、おそらくキャラクターが持っている弓を表現したであろう謎の青い液体が付着しており、「なんですかこれは!?」と怯えていた。

続いて入場時に配られた整理券の順番でグッズ販売が開始した。グッズ売り場には、各キャラクターのイラストが描かれたタペストリー、クリアファイル、マグカップ、iPhoneケースなど、イベントのテンションで大量購入すると後々に後悔しそうなグッズが色々と販売されていた。特に必要な物はないが何も買わないのも味気ないので、記念に会場限定のイラストが描かれたアルテラとマリーのクリアファイルを購入した。隣を見るとAさんは僕よりも多い数のクリアファイルを購入していた。

「クリアファイルはいくつあっても困りませんからね」
Aさんはそう言うが、昨今では、クリアファイルファイルとかいう、クリアファイルのファイルとしての意義を問いかけるような製品も販売されている。グッズ化しやすいというだけで乱造されるクリアファイルについて、我々は今一度考える必要があるのではないか。

こんな感じのよく分からないイベントであるが、唯一目玉と言っていい企画が存在した。それが公開霊基召喚である。自分のスマホで聖晶石召喚(ガチャ)をすると、それが会場の大型モニターに映し出されるという、ギロチンや鉄の処女で処刑するのは日本の法律的に無理なので、もっと面白い方法で公開処刑をしようという運営の粋な計らいである。人前でガチャを引くのは恥ずかしいが、当たっても外れてもどちらにせよ日記のネタにはなるだろうと思い、この日のために10連分の石を貯めておいた。
「そんな訳で僕は10連を引いてみようと思います」
「では私もやります」
そう言うと、その場で課金して石を補充するAさん。わかりやすくダメな大人である。

そんな訳で公開霊基召喚に挑むことにした我々、だがここで予期せぬ事態が起こった。引く前に整理券をもらうのだが、我々は並ぶのが遅かったため順番的に最後になってしまい、時間の都合上、10連ではなく1回しか引けないことになってしまった。最もレア度が高い☆5のサーヴァントを引ける確率はわずか1%であるため、わずか1回の挑戦で引き当てるのは至難の業である。

さすがに最後に引くのは嫌ということで、僕の前にAさんが引くことになった。彼女には悪いが☆3のへっぽこ礼装でも適当に引いてもらい、彼女の仇を討たんとばかりに僕が☆5のサーヴァントを一発で引き当てることで、Aさんも「決める時には決める人だ(サイトは更新しないけど)」と僕への評価を高めるに違いない。仮に僕もハズレを引いたとしても、それはそれで二人の間に連帯感が生まれるであろう。どちらに転んでも親密度アップ間違いなしである。

そんなことをぼんやり考えていたのだが、周囲のざわめきの声に気づいて我に返った。
ふとモニターを見ると、そこには金色に光り輝くバーサーカーのカードが映し出されていた。
ゆっくりとカードが捲られていくと、そこにクー・フーリン(オルタ)が現れた。
さっき僕がコースターを引いた☆3のクー・フーリンではなく、最もレア度の高い☆5のクー・フーリンである。ピックアップ期間中の目玉キャラで、この日の公開霊基召喚自体がこのキャラを引くのが目標と言っても過言ではない。
予想外の事態に「はわわ」と戸惑うAさん。そんな彼女に対して客席から歓声と止むことのない拍手が送られた。

その後のことは詳しく覚えていない。
僕は☆3のロビンフッド? なんかそんなのが出たよ。

「楽しかったですね!」
イベント終了後、自身のスマホ画面のクー・フーリンオルタを見ながら満足気に微笑むAさん。彼女とはゲーム内でフレンドになったのだが、今後サポートで出てくる彼女のクー・フーリンオルタを見る度に今日の日の屈辱を思い出すであろう。今後は彼女が欲しいと言っているサーヴァントを自分が引き当てて、これみよがしに見せびらかして復讐せねばなるまい。