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パスピエのライブに行く 〜ライブに行くまで編〜

先日、パスピエのライブ「印象D」の東京公演に行ってきた。早速ライブの感想を書きたいところであるが、行くまでにも色々あったので、まずはライブ当日までの出来事について記す。

そもそもライブのチケットを取ったのは今年の二月の初めのことである。その時はこれから到来する春に新たな出会いの予感でも感じたりしたのだろう、特に一緒に行く人もいないのにチケットを何故か二枚取ってしまった。六月までには一緒にライブに行く友達の一人は増えるだろう。そんなことを考えていたのだが、全く増えなかった。それどころか唯一の友人が関西に引っ越してしまったため、東京における友人らしい友人が上京14年目にして0になってしまうという緊急事態を迎えてしまった。

そんな訳でライブの二週間前になっても同行者は決まらなかった。かといって転売したり他の人に譲るのも面倒なので、ここはTwitterで同行者を募ることにした。しかしフォローしている全員に向けて「誰かパスピエのライブに一緒に行きませんか?」と呟いてしまっては「こいつ、ライブ当日まで友達が出来ると思ってチケットを二枚取ったけど結局一人も出来なかったんだな」と思われるに違いないので、僕をフォローしている人のみに送れるダイレクトメッセージを使って誘ってみることにした。しかしここでも新たな問題が発生した。Twitter上においてもこれといって仲の良い人が存在しないのである。

悩んだ末、以前パスピエに関するツイートをしていて、自分のツイートにもよく反応してくれる、Aさんという女性にダイレクトメッセージを送ってみることにした。とはいえ、リツイートやお気に入りなどで反応してくれることはあっても、今まで直接リプライやダイレクトメッセージのやり取りをしたことはない。突然の誘いに最悪ブロックされるのもやむを得まいと思っていたが、送信して間もなくして返信があった。文面を見るに突然のダイレクトメッセージに驚いてはいるものの拒否はされなかったので、千載一遇の好機とばかりにパスピエのライブがいかに楽しいものであるかを訴えた。結果、僕の秘められた押し売りとしての才能が開花したのか、Aさんが一緒にライブに行ってくれることになった。Twitter万歳!SNSってもしかしたら人と交流するためにあるんじゃないか。

ライブは平日の19時に開始なのだが、Aさんはわざわざ有給を取って参加してくれることになった。僕も職場を早退して向かうことにした。待ち合わせ時間や連絡手段なども問題なく決まり、あとは当日を迎えるだけという状態になった。だが、当日になって急に緊張してきた。珍しく自分から行動を起こして、それが成功した充実感から忘れていたが、冷静に状況を分析すると、顔すら知らない初対面の人と一緒にライブに行くという、コミュニケーション能力にやや難がある僕にとってはかなり難易度の高いミッションである。

そんな不安を抱えながら待ち合わせ場所である新木場駅に向かった。僕の方が少し先に着いたので改札の前で待つことにした。ここからがネット関係の人と会う時の最初にして最大の問題である。何せ顔はおろか背格好すら知らない二人である。待ち合わせ場所に着いても相手が誰なのかがわからない。確認のためにメールなどでやり取りをしながら周囲を伺っていると、自分と同じタイミングで携帯電話を操作している人の存在に気付く。ダメ押しとばかりにメールを再送すると、その人の携帯電話が反応する。次の瞬間にお互いの目が合って「あの、もしかして……」といった感じで恐る恐る話しかけるという、この世の恥ずかしさを全て煮詰めたような出会いがネット関係の人と会うということである。

そんなことを考えていたら「ヒロさんですか?」といきなり話し掛けられた。Aさんであった。
「えっ、なんでわかったんですか?」
「あ、ヒロさんしか待っている人がいなかったので」
当然のこととばかりに答えるAさん。彼女はそう言うが、僕はこれまで顔写真はおろか、体の一部すらネットに露出していなかった。それなのに彼女は迷うことなく自分に話しかけてきた。よって読者の方は僕が文章から読み取れる印象そのままの外見をしていると思って頂いて結構である。そう、その斎藤工ですよ。

ともあれ無事に合流出来たので会場に向かうことにした。Aさんに関しても僕はどんな容姿をしているかは知らず、仮にネカマであってもその場は平静を装って対処するつもりであったが、普通に可愛らしいお嬢さんであった。今後は彼女を意識して「おばあさんに席を譲った」などのツイートが多くなるかもしれない。二人は初対面であるが何年も前からお互い存在を把握しており、趣味はおろか前日に取った食事すら知っているという珍妙な関係性なので、道中の会話もこれまた珍妙なものになった。

「新木場に来たの初めてです」
「僕もサカナクションのライブ以来二回目です」
「風が強いですね〜」
「うん、でも天気が良くてよかったです」
「あ、サイト見てます!」
「ありがとうございます。今日をきっかけにまた更新を頑張りたいです」
「ルナマリアさんの更新も待ってます!」
「あっ、うん、それは……」

そんなことを話しているうちに会場であるスタジオコーストに到着した。(続く)