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【音楽】相対性理論「立式Ⅲ」


先日、相対性理論のライブに行ってきた。
昨年の三月のライブ以来、約一年ぶり三回目の参加である。
ライブは一度行ったら満足という人間である僕にとって、
同一アーティストのライブに三回も行くというのは快挙である。
(参加の理由は、過去の二回がどちらもやや消化不良だったから)



会場は中野サンプラザであった。
同伴者は前回に引き続き小川ひなたさんである。
全席指定なので開演の二十分前に会場に着いたのだが、
それでも会場の前には、長蛇の列が出来ていた。
皆がドラクエで街の周りでレベル上げでもしている時のように、
列を作ってジグザグに移動していたので、我々もその列に並んだ。



我々が座席に着いた頃には、既に開演時刻を過ぎていたが、
一向に開演する気配がないので、会話をして時間をつぶすことにした。
「今日は相対性理論のワンマンなんですよね」
「そういうことになってますが、僕はシークレットゲストが来ると踏んでいます」
「へえ、一体誰が?」
「来月行われる新木場のライブのゲストが、小山田圭吾と豪華です。
正しい相対性理論に参加したアーティストの中で、それに匹敵する人物。
ライブハウスではなく、あえてホールである中野サンプラザを会場に抑えた。
ここから導きだされる結論は……」
「……坂本龍一!」
「そうです。教授が来てくれるに違いありません。
事前に言うと大騒ぎになるので本番まで黙っているのでしょう」
「教授‥…わくわく!」
我々は期待に胸を膨らませて開演を今か遅しと待った。



開演予定時刻を二十分ほど過ぎた頃、ようやく場内の照明が落ちた。
青いライトが上下に動き舞台の幕を幻想的に照らす中、
「正しい相対性理論」に収録されている「QMCMAS」が流れる。
一瞬にして場内を支配する相対性理論の世界に、否が応にも期待が膨らむ。



だが、いつまで経っても舞台の幕が上がる気配がない。
まさか十分以上ある曲を終わりまで流し続けるつもりか。
やくしまるえつこ嬢も待ちくたびれて寝てしまうのではないか。



寝落ちする直前になって、ようやく舞台の幕が上がった。
今回はいつものバンドメンバーに加えて、
サポートとしてキーボードとバイオリンの人が加わっている。
江藤直子氏と勝井祐二氏、どちらも著名な方のようである。



舞台上で重厚なアンサンブルを奏でる五人。
しかし、いつまで経ってもやくしまるえつこ嬢が現れない。
「もしかして本当に寝てしまったのではないだろうか?」と思ったその時、
舞台袖から寝起きのようなもっさりとした動きをした人影が現れた。
この遠目から見ても怪しい人物こそが、やくしまるえつこ嬢である。
演奏が一瞬静止し、直後、彼女の一声と共に「Q/P」が始まった。
彼女が立つ舞台中央の円形のステージは、周りを電球で縁どられており、
全身黒ずくめの彼女は、さながら魔方陣に立つ魔法使いのようであった。



「Q/P」から「ミス・パラレルワールド」と続き、
その次の曲は「ヴィーナスとジーザス」であった。
この曲はやくしまるえつこ嬢のソロ名義の楽曲であるが、
相対性理論のライブでも普通に演奏されている。
テレ東のアニメ「荒川アンダーザブリッジ」のOPでお馴染み。
実写版は誰か止める人がいなかったのだろうか。



曲が終わり、各自が次の曲のセッティングをする中、
やくしまるえつこ嬢は側に置いてあるペットボトルに手を伸ばした。
これが相対性理論のライブ名物、やくしまるえつこ嬢の給水タイムである。
ペットボトルを両手で抱えて、可愛らしく水を飲むやくしまるえつこ嬢。
エビオス嬢も嫉妬するほどの合コン受けを狙った飲み方である。
給水だけでこれほど間を持たせることが出来るアーティストは、
邦楽界広しといえども、彼女ぐらいのものであろう。
清涼飲料水メーカーは是非とも彼女をCMに起用して欲しい。
サンガリアさん、どうぞよろしくお願いします。



水を飲み終えたやくしまるえつこ嬢。
蓋を締める音をマイクに響かせた後で彼女のMCが始まった。



「覚悟はいい? ふしぎ体験はじまる」



以上である。
知らない人には「何を言っているんだお前は」と思われそうだが、
僕が今までに聞いた彼女のMC中では、過去最大級の煽り文句である。
そんなMCから「ふしぎデカルト」が始まったのだが、
曲の開始と同時にテント状の巨大な布が天井から吊り下げられた。
かなりあやしいオブジェクト。これがふしぎ体験の種だろうか?
おそらくこの布を使ったイリュージョンが何かあるに違いない。
布に包まれたやくしまるえつこ嬢が舞台上から消えてみせるとか。
だが、最後まで特に何事も起きることなく曲は終了した。逆に不思議!



それから「人工衛星 」「Q&Q 」「四角革命 」と続いた後で、
やくしまるえつこ嬢による二回目のMCが入った。



「目が合ったら、撃ちます」



まさかの殺害予告と共に「シンデレラ」が始まった。
僕の席は真ん中のやや後方という、目が合ってもおかしくない位置である。
いつ彼女が太ももからデリンジャーを抜くか、ドキドキしながらの視聴となった。



デリンジャーは装弾数が二発のため、負傷者は二名で済んだ。
撃たれずに済んでホッとしていると「(恋は)百年戦争」が始まった。
この曲はイントロ部分がバイオリンによる演奏にアレンジされていた。
おそらく勝井氏はこのために呼ばれた部分が大きいと思われる。
以前「ふしぎデカルト」のイントロを渋谷氏にピアノで弾かせたのといい、
豪華なサポートメンバーにふざけた感じのことをさせるのが好きらしい。



続いて演奏されたのは「ほうき星」であった。
今回演奏された中では、唯一音源化されていない楽曲であるが、
次のアルバムへの収録が待たれる、大変可愛らしい曲であった。
えつこ可愛いよえつこ。脚が思いのほか太いけど可愛いよ。



曲が終わり、再びMCのタイミングを図るやくしまるえつこ嬢。
観客も次にどんなネタが飛び出すのかを期待して待った。
もはやふかわりょうの一言ネタの世界である。
一部では次回のM1に出場するのではないかという噂もある。
そんな彼女の口から飛び出した言葉は、我々の想像以上のものであった。
「ブロードウェイ vs とげぬき地蔵 」
彼女の発した言葉の意味が分からずにざわめく客席。
ブロードウェイととげぬき地蔵、そこにどんなライバル関係が?
いや、会場が中野だけに、中野ブロードウェイのことかもしれない。
それはそれで意味がわからないが。



混乱の中で始まったのが「COSMOS vs ALIEN」である。
この曲はやたらと早口で歌う部分があるため、
ライブで噛まずに歌えるのかどうか心配だったが、
やくしまるえつこ嬢頑張った。最後まで噛まなかった。



続いての曲は「(1+1) 」であった。
やはり発売したばかりの「正しい相対性理論」からの選曲が多い。
しっとりとした曲を聴きながら、一つの懸念が浮かんだ。
この曲は「正しい相対性理論」の最後に収録されている曲である。
ということは、これはライブの最後に演奏する曲なのではないか。



その予感は的中した。
「またね」の一言を残して退場するやくしまるえつこ嬢。
開演が遅れたこともあり、まだ演奏時間は一時間にも満たない。
僕が予想していたシークレットゲストもどうやらいないようである。



アンコールの拍手がまばらに鳴り響く中、メンバーが再登場した。
今度こそ盛り上がる曲をやってくれるかと期待したが。
アンコールの一曲目は「ムーンライト銀河」であった。
ミラーボールが回りだし、ムーディーな雰囲気に包まれる場内。
この一曲でアンコールを終わりにする気満々である。



曲も終わりに差し掛かった時である。
ギターの永井氏の元にスタッフが駆け寄ったかと思うと、
突然、永井氏がギターを投げ飛ばした(蹴った?)。
手際の悪いスタッフにブチ切れたのかしらと思ったが、
どうやらこれは彼のパフォーマンスのようであった。
中世の騎士のような大仰な仕草で観客に一礼して退場する永井氏。
未だに彼のキャラクターを把握していないので、こちらは反応に困った。



続いてベースの真部氏も退場し、徐々に寂しくなる舞台上。
そんな中、バンドの楽器隊で唯一残っているドラムの西浦氏が、
ここがアピールタイムとばかりに白熱のドラムプレイを魅せる。
やはり相対性理論の中で彼だけ毛色が違う。普通のバンドマンっぽい。
他のメンバーが未だに自分を多く語らない中、
彼だけは普通に個人でツイッターをやっているし。
彼が酔っぱらっている時に、ツイッター上で質問すれば、
やくしまるえつこ嬢の本名などを教えてもらえるかもと思ったが、
おそらく彼にも知らされてないのではないか。携帯番号も知らなそう。



ちなみに間奏中のやくしまるえつこ嬢は、ひたすら棒立ちである。
今回のライブは、彼女の心拍データが発信されていたらしいが、
もしかしたら、この時ばかりは脈拍も止まっていたかもしれない。



西浦氏も退場した後、再び冒頭の部分を歌うやくしまるえつこ嬢。
最後に「おやすみ」の一言を残して、彼女も退場した。
同時にずっと天井に吊り下げられていた布が支えを外され、
ゆっくりと舞台上の機材の上に落下した。
これにて本日のライブは全て終了である。



ゲストもなく、演奏時間は実質一時間程度。
いくら箱代が高いにしても、これで4800円は割高に思える。
だが、これこそが相対性理論なのである。
彼らのライブに演者と観客の一体感や充実感といったものを求めてはならない。
「一体なんだったのかしら?」という感想を抱くのが正解である。
しばらく観ていない間に、サービス精神旺盛になってしまっていたら、
大衆に迎合してしまったと、逆にガッカリしてしまっていただろう。
二年前から何ら変わっていないライブパフォーマンスに安心を覚えた。